行政視察報告 令和7年8月6日~7日②
- n42yuta930
- 8月14日
- 読了時間: 7分
続いて愛知県一宮市の子育て支援事業の視察報告です。
~人口減少に歯止めをかけるために伊奈町が学ぶべきこと~ (ご利用されている方々がいらっしゃったので、使用する写真は限られてしまいます。ご容赦ください。)

8月7日には、愛知県一宮市を訪れ、全国的にも先進的と評価される子育て支援事業の現場を視察してまいりました。現在、全国的に少子高齢化と人口減少が進む中で、子育て世代にとって魅力的な環境を整えることは、地域の将来を左右する重要な課題です。
一宮市の事例は、その課題に真正面から向き合い、成果をあげている好例といえます。
一宮市の特徴的な取り組み
視察の中心となった「中央子育て支援センター」は、相談・交流・一時預かり・情報発信を一体化した多機能型施設であり、単なる相談拠点を超えた「子育て支援の司令塔」として機能しています。保育士だけではなく各専門職が常駐し、多角的かつきめ細かなサポートが提供されています。また、スマートフォンから予約や相談ができるデジタル化の推進、理由を問わず利用できる一時預かり(リフレッシュ目的も可)、退職教員や看護師など地域の経験豊かな人材を活用した「子育てすけっとバンク」、さらには町内を巡回する移動型子育てサロンなど、多様なニーズに応える取り組みが展開されていました。
1. 産後ヘルプ事業について
この事業は、出産前・出産後の体調不良のため家事や育児が困難な家庭、または多胎児を出産した家庭などに、援助してくださる方をご紹介する制度です。
出産後のお母様方は、身体の回復が十分でない中での育児や家事に大変な負担を感じておられることと存じます。特に双子や三つ子などの多胎児を出産されたご家庭では、そのご苦労は計り知れません。
本事業では、そうしたご家庭に対して適切な援助者をご紹介し、1時間700円~1000円(曜日・時間帯等により異なります)でサービスを受けることができます。
特筆すべきは、多胎児(ふたごなど)を出産した家庭の産後ヘルプ利用料を補助する制度も設けられており、多胎児育児の負担軽減に配慮がなされている点です。
2.子ども一時預かり事業について
この事業は、子育て中のお母さん・お父さんのリフレッシュのため、一時的に乳幼児をお預かりする制度です。

対象者や利用条件
①保護者が市内在住のおおむね生後6カ月~未就学の乳幼児
②午前9時~午後5時までの4時間以内の利用
③1日定員6名
※特性のある子どもに関しても受け入れ可能ですが、事前の登録時に保護者から十分な情報の聞き取りを実施。(必要な必要な配慮事項を確認した上で対応となっています。現場ではスペースの制約があるため、事前に一定の利用条件や制限事項を伝える工夫を行っています。その日の支援体制によっては利用をお断りすることもある様です。)

利用料金 は、1時間あたり500円いう手頃な料金設定となっており子育て世帯の経済的負担に配慮されています。
お支払いはPayPay・現金のみとなっております。また、事前予約方法をとっており 1ヶ月前から予約可能です。
電話または「138おやこ手帳アプリ」による電子申請が利用できます。当日申し込みも空きがあれば可能です。実施場所は中央子育て支援センター(愛称i‐キッズパーク)内の専用施設で、安全で適切な環境が整備されています。
なお、中央子育て支援センターは、駅ビル内の施設のため利便性が高く、利用者が多いのが特徴。また、休日の利用者や男性の育休取得増加により父親送迎も増えているとのこでした。 「138おやこ手帳アプリ」 https://www.mchh.jp/top/cityinformations?lgCode=23203
3.ファミリーサポートセンター事業について
本事業は、育児の援助を受けたい方と育児の援助を行いたい方がお互いに助け合う組織として、地域の相互扶助による子育て支援を推進する重要な取り組みです。
基本的な考えは、「地域で子育て みんなで子育て」です。 この方向性は、大変共感でき、私が目指している子育て支援政策とも一致します。
◎利用場面の例
①保育園や放課後児童クラブなどの送迎ができない場合
②リフレッシュのための時間が必要な場合
③保育園や幼稚園の開始前・終了後の預かりが必要な場合
◎会員制度
①依頼会員:市内在住・在勤・在学の方で、0歳~小学6年生のお子様がおられる方が対象。1時間程度の説明 会参加で登録完了。
②援助会員:市内在住で20歳以上の健康な方が対象。自宅での預かりや送迎が可能な方。2日間の説明会・講習会受講が必要。
③両方会員:援助も依頼も行う会員。援助会員と同様の条件。
◎報酬体系
①平日午前7時~午後7時:700円/時間
②土日祝日・年末年始の同時間:800円/時間
③その他の時間帯:800円~900円/時間
④30分以内の場合:一律400円
尚、安全対策として会員の皆様には自動的にファミリー・サポート・センター補償保険が適用され、万が一の事故に備えた体制が整っている。
これ以外にも子育てセンターのすけっと活動を希望する方向けに「子育てすけっとバンク」と言う登録制度もあります。主な活動内容は、センター受付手伝い、赤ちゃんの抱っこや子どもの遊び相手、親子遊びの補助、会場作りや片付けなどとなっています。これは、ボランティアとなっています。子育て支援センターが実施する説明会兼講習会参加とボランティア保険の加入が必要。
市内を巡回する移動型子育てサロン(うごく子育てサロン こっこ)も特徴的であり、自宅近くの施設を
毎月1回出向き、臨時子育て支援センターを開設。子育て相談や情報提供も行っているそうです。 https://www.city.ichinomiya.aichi.jp/kodomokatei/chuuoukosodateshien/1000154/1010631/index.html

〇 一宮市の成果と効果
これらの取り組みの結果、一宮市では出生率が全国平均を上回り、子育て満足度は87%を超えています。加えて、子育て世代の転出率を前年比で15%減少させるなど、人口減少に一定の歯止めをかける効果が見られています。
このような多層的支援は「エコロジカル・システム理論」に基づき、家庭(マイクロシステム)、地域や教育機関(メソシステム)、行政や企業(エクソシステム)が連携し、子育てを支える社会全体の仕組みを形成していると評価できます。
●伊奈町の現状と課題
伊奈町でも子育て支援センターや放課後児童クラブ、乳幼児健診などの取り組みはありますが、機能が分散しているため利用者が分かりにくい状況です。
また、専門職の不足、デジタル化の遅れ、地域人材の活用不足といった課題も抱えています。これらは、共働き世帯の増加や核家族化の進行により、多様化・複雑化する子育てニーズに十分対応しきれていない要因となっていると考えます。
●伊奈町への提案
一宮市の事例を参考に、伊奈町でも次のような段階的施策を導入すべきと考えます。現在の伊奈町の子育て支援施策は、長期的な展望が見えにくい状態だと感じています。
短期(1~2年)
・子育て支援センターの機能強化(デジタル予約システム導入、専門職定期配置)
・一時預かりの利用条件緩和、多子世帯割引制度の導入
中期(3~5年)
・ファミリーサポート事業の高度化(AI等によるマッチング改善、特別支援研修の充実)
・移動型子育てサロンの創設によるアウトリーチ型支援
長期(5年以上)
・妊娠期から学童期までを一貫して支える「子育て世代包括支援センター」の設置
・地域人材を登録・活用する「伊奈町子育てサポーターバンク」の創設
これらの施策は、国・県の補助金を最大限活用することで財政負担を軽減しつつ、段階的に実現可能だと感じます。情報収集に注力し、補助金を上手に活用している自治体からそのスキルを学ぶ必要があるのではないでしょうか。
一宮市とは財政規模や環境が大きく異なります。しかし、人口減少の課題は、どの自治体にも共通する内容です。また、この課題は、財政直結する重要な部分でもあります。他自治体の調査・研究をもっと真剣且つ積極的に行う必要があり、他自治体よりも優位にまちづくりを進める必要があります。他自治体より常に1歩進んだ取り組みが必要です。
私が、一般質問で提案した「プレクラス制度」がまさにこれに通じます。執行部は、失敗することを恐れるが故にすべてにおいて取り組みが後手になっています。これでは、伊奈町に移住して貰う選択肢(候補)には挙がりにくくなってしまいます。子育て支援は、将来の伊奈町を支える重要な政策の1つだと考えています。
まとめ
一宮市の視察で学んだのは、「支援制度や施設を整えるだけでなく、利用しやすい運用と、地域に出向く積極的な支援が重要」という点です。伊奈町においても、子育て世代が安心して暮らせる環境を整えることは、人口減少に歯止めをかけ、町の将来を守る鍵となります。議員として、町民の皆さんや関係団体と意見交換を重ねながら、「子育てするなら伊奈町」と誇れるまちづくりを進めてまいります。



