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常任委員会行政視察報告            令和7年10月1日~2日①

  • n42yuta930
  • 10月11日
  • 読了時間: 13分

令和7年10月1日から2日にかけて行政視察に行ってまいりました。           場所は、埼玉県飯能市と茨城県常総市です。

視察目的は下記の2点になります。

①飯能市は、下水道事業包括的民間委託について

②常総市は、防災先進都市を目指す取り組みについて

先ずは、飯能市と常総市の概略からです。


・飯能市について                                   (飯能市HP: https://www.city.hanno.lg.jp/index.html )

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飯能市は埼玉県の南西部に位置し、東は狭山市と入間市、南は東京都青梅市と奥多摩町、西は秩父市と横瀬町、北はときがわ町、越生町、毛呂山町、日高市に接しています。

地形は山地、丘陵地、台地に分けられます。北西部は山地で、市域の約75パーセントを森林が占めています。入間川、高麗川の一級河川が、西部山地から東部台地へと流下しています。気候は、太平洋側の内陸型気候ですが、山間部は季節による気温の変化が激しく、降水量は埼玉県内でも多い地域となっています。昭和29年に県下9番目の市制を施行、古くは林業と織物のまちとして栄えました。昭和40年代からは宅地化が進展し、高校や大学、工場などの立地も進み、首都圏の近郊住宅都市として変化をみせました。都心から約50キロメートル圏内に位置し、交通アクセスも良好な環境にありながら、緑と清流という自然に恵まれた飯能市は、古くから豊かな森林と人との共生によって、人々の暮らしや文化・歴史、産業が育まれてきました。 2025年9月1日現在の人口は、77万670人。世帯数は36万831世帯。2025年一般会計当初予算は、318億5,000万円となっています。  (飯能市HPより出典)


・常総市について                                   (常総市HP:https://www.city.joso.lg.jp/ )

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茨城県の南西部、都心から55キロメートル圏内に位置しており、東はつくば市・つくばみらい市、西は坂東市、南は守谷市、北は八千代町・下妻市にそれぞれ接しています。南北は約20キロメートル、東西は約10キロメートルの広がりを持ち、面積は、123.64平方キロメートルです。標高は約5から24メートルで、気候は、太平洋型の気候であり、四季を通じて穏やかです。本市のほぼ中央には一級河川の鬼怒川が流れており、東部の低地部は広大な水田地帯となっています。西部は丘陵地となっており、集落や畑地、平地林が広がっていますが、住宅団地や工業団地、ゴルフ場なども造成され、近郊整備地帯として都市機能の強化も図られています。道路体系は、本市を南北に国道294号、東西に国道354号が整備されています。また、周辺市町村と連絡する主要地方道や一般県道があります。さらに、本市のほぼ中央部には首都圏中央連絡自動車道が開通し、広域道路網の整備が進んでいます。鉄道については、南北に関東鉄道常総線が走り、取手方面と下妻・筑西方面を結び、守谷においてつくばエクスプレスと接続し、東京都心などへの所要時間の短縮により通勤圏の拡大が進んでいます。 2025年9月1日現在の人口は、60万116人。世帯数は26万361世帯。2025年一般会計当初予算は、263億2,000万円となっています。  (常総市HPより出典) 参考:伊奈町  2025年9月1日現在の人口は、4万4,911人。世帯数は2万165世帯。2025年一般会計当初予算は、153億5,600万円となっています。(伊奈町HPより出典)


飯能市下水道事業包括的民間委託について 

1.はじめに

人口減少と施設老朽化が進む中、下水道事業の持続可能な運営が全国的な課題となっています。飯能市は平成21年度から包括的民間委託を導入し、15年以上の実績を持つ先進自治体です。本視察では、同市の取り組みを学び、伊奈町における今後の下水道事業運営の参考とすることを目的としました。 2. 飯能市と伊奈町の下水道事業概要(比較)

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伊奈町の特徴

町独自の終末処理場を持たず、埼玉県中川流域下水道(中川水循環センター)にて一括処理する仕組みです。

  • 処理方式は分流式であり、町内の主要ポンプ場(第1中継ポンプ場)1か所が管渠ネットワークの基幹となっています。

  • 施設や管渠の老朽化率は現時点で極めて低い状況ですが、今後更新投資の増大が確実視されます。

  • 事業費は令和12年度までで約206億円規模です。

  • 出典資料先: https://x.gd/UpLHt (スペースの関係上短縮してあります。)  伊奈町公共下水道事業経営戦略 (令和5年度~令和14年度)

飯能市の特徴 事業開始が非常に早く、町内に自前の浄化センター(終末処理場)を2か所、ポンプ場も多数設置しています。

飯能市浄化センター        (浄化センターHPより引用)
飯能市浄化センター        (浄化センターHPより引用)

処理人口は伊奈町より多いですが、将来は減少目標となっています。

  • 施設老朽化が著しく、維持管理コスト及び更新計画が大きな課題です。

  • 標準活性汚泥法で自ら処理を完結できる体制を持っています。

総合評価 伊奈町は、地域人口や町域のスケール、分流式・ポンプ中継主体での管理、広域終末処理依存が特色です。一方、飯能市は自前施設の多さと、昭和期からの経年劣化への対応が大きな課題となっています。両市町とも人口減少局面への対応とストックマネジメントの重要性は共通していますが、施設配置や維持管理方法で大きな違いが見られます。八潮市の様な事案が発生した際、広域終末処理となっている伊奈町は課題が多い。特に最北に位置する伊奈町は、八潮市の事案を教訓に対応手段等を検討する必要性を感じました。


浄化センターでは、各家庭や事業所などのトイレやお風呂などから排出された水(汚水)を集め、処理を行い、きれいな水にして再び河川へ戻す役割を担っています。各家庭や事業所から排出された汚水は、下水道管を通って浄化センターへと流れていきます。浄化センターでは流れてきた汚水を微生物の力を借りてきれいな水に戻します。水質に問題はないか検査を行い、きれいになった水は、無事に河川へと放流されるのです。             飯能市浄化センターHPより引用
浄化センターでは、各家庭や事業所などのトイレやお風呂などから排出された水(汚水)を集め、処理を行い、きれいな水にして再び河川へ戻す役割を担っています。各家庭や事業所から排出された汚水は、下水道管を通って浄化センターへと流れていきます。浄化センターでは流れてきた汚水を微生物の力を借りてきれいな水に戻します。水質に問題はないか検査を行い、きれいになった水は、無事に河川へと放流されるのです。             飯能市浄化センターHPより引用

3. 包括的民間委託の導入経緯と背景

導入の背景(平成21年度開始)

飯能市が包括的民間委託を導入した背景には、以下の課題がありました。

施設面の課題

  • 建設から約30年が経過し、老朽化による突発的な故障が増加している。

  • 事後対応型から予防保全型の維持管理への転換が急務である。

  • 国が包括的民間委託を推奨していた政策的背景があった。

管理面の課題

  • 多数の施設・ポンプ場ごとに個別契約が必要で、発注事務が煩雑だった。

  • 紙媒体での入札手続きに膨大な時間と労力を要していた。

  • 技術職員の確保が困難な状況だった。

私の視点

飯能市の事例は、施設老朽化と人材不足という「待ったなし」の課題に直面した自治体が、どのように効率的な事業運営体制を構築したかを示す重要な事例です。伊奈町も同様の課題を抱えており、早急な検討が必要であると考えます。ただし、伊奈町は町内に終末処理施設を持たず、中川水循環センター(埼玉県管理)へ下水を送る広域処理方式をとっています。このような方式特有のリスク管理についても、併せて調査・検討をする必要があると感じました。

4. 包括的民間委託の具体的内容

浄化センター内 管理室①
浄化センター内 管理室①

委託業務の範囲

●包括契約に含まれる業務

  • 浄化センター2か所、ポンプ場52か所の運転監視・保守点検

  • 施設の清掃、小規模修繕、緊急対応

  • 水質・汚泥の測定と管理

  • 管渠の定期清掃(年間約5km、5年ローテーション)


浄化センター内 管理室②
浄化センター内 管理室②

●市が別途発注する業務

  • 中・大規模な修繕・更新工事

  • 耐震対策工事

  • 汚泥の運搬処分

  • 定期清掃以外の管渠修繕・改築更新工事

飯能市では「委託レベル2.5」(一定規模の修繕を含む)を採用しています。重要なポイントは、大規模投資は市が直接管理することで、自治体としての事業統制を維持している点です。全てを丸投げするのではなく、戦略的な役割分担が行われています。

                   「委託レベル2.5」とは(公益社団法人日本下水道協会資料▼




5. 契約形態と事業者選定

  • 契約期間: 3年間の長期継続契約(現在6期目)

  • 選定方法: 随意契約方式

    • 前年度に市の契約検査課が実績ある複数業者を選定

    • 見積もり徴収後、最も低価格を提示した事業者と契約

  • 現委託業者: 明電舎ファシリティサービス株式会社

    • 埼玉県内6自治体で実績があります

    • 飯能市では総員27名(日勤15~20名、夜勤2名)の24時間体制

    • 本社技術部隊によるバックアップ体制を完備

私の視点

随意契約方式については、競争性の確保と事務効率化のバランスが重要だと考えます。飯能市では実績ある複数業者から見積もりを取ることで透明性を確保しています。(12社程度依頼。提出されるのは3~4社)また、3年契約により業者の技術蓄積とコスト削減の両立を図っている点は評価できます。

6. 導入効果と課題について

具体的な効果

コスト面

  • 職員2名削減により年間約1,200万円の人件費削減を実現

  • 予防保全による中長期的な修繕費抑制効果(詳細な比較は困難ですが実感があるとのことです)

業務効率化

  • 多岐にわたる発注業務の大幅削減が実現

  • 市職員の事務負担が軽減

  • 緊急時対応のスムーズ化が図られた

技術職員配置の変化

  • 平成25年度:技術職10名、事務職7名

  • 令和6年度:技術職5名、事務職10名

  • 施設業務担当:3名(電気系技師1名、土木系技師1名、事務職1名)

私の視点

人件費削減額が想定より低い理由は、下水道課職員の平均年齢が38歳と若く、給与水準が低いためと説明がありました。しかし、将来的な人財確保難を考えれば、包括委託による業務効率化の意義は大きいと考えます。技術職の減少及び確保は全国的な課題であり、伊奈町でも同様の状況が予想されます。

(下水道事業に関係なく職員確保については、多角的な視点をもって取組む必要があるのではないでしょうか。)

7. 契約金額の推移(重要論点)

契約金額の推移(年間・概算)は以下の通りです。

  • 平成21年度~:2億8,100万円

  • 平成24年度~:2億3,000万円

  • 平成27年度~:2億4,000万円

  • 平成30年度~:2億5,000万円

  • 令和2年度~:2億7,000万円

  • 令和6年度~:4億8,000万円(約1.8倍に増額)

令和6年度増額の主な要因

  • 業務内容の増加(管渠清掃の追加等)

  • 人件費や薬品等の物価高騰

  • 市の積算基準・要領への厳密な準拠による積算方法の見直し

私の視点(最重要論点)

令和6年度の契約金額が前期比1.8倍に増額した点は、極めて重要な教訓であると考えます。飯能市の説明によれば「以前の費用では人材確保が困難であり、事業を適正に維持するために必要」とのことですが、この大幅増額は議会としても重大な関心事です。(算定をより細かに且つ現実に即したものとしたことが大幅増額の要因の1つと捉えていると飯能市職員から説明がありました。)

包括委託を検討する際、初期の契約金額が低く抑えられていても、適正な積算を行えば将来的に大幅な増額が必要となる可能性があります。この点は伊奈町で検討する際の重要な留意事項です。単なるコスト削減策ではなく、適正な委託費の確保が持続可能な事業運営に不可欠であると認識すべき点です。

8. 新たな課題

管理面の課題

  • 管渠清掃業者と市が直接やり取りしないため、フィードバックの適切性に懸念がある

  • 包括化により発注業務が減少し、職員の施設業務への意識が薄れる傾向があります

技術継承の課題

  • 運転管理ノウハウは業者側で蓄積・継承されます

  • 市の役割は「マネジメントの的確な実行」となります

  • マニュアルや報告書のデータ化による知識の保持が必要です

私の視点

包括委託により市職員の「現場感覚」が薄れるリスクは実在します。飯能市では新規職員への施設見学や定例会議(月1回)、日々の報告により対応していますが、伊奈町で導入する場合も同様の配慮が必要です。人財育成は永遠の課題であり、喫緊に対応するべき事案の1つであることに変わりはありません。市の役割を「発注者」から「マネジメント」へと意識転換することが重要です。

9. 緊急時・災害時の対応体制

  • 契約仕様書に「異常時措置業務」を明記しています

  • 現場対応は委託業者が基本となり、市は連絡調整等のバックアップを行う

私の視点

災害時の対応体制が明確に定められている点は評価できます。ただし、大規模災害時には委託業者だけでは対応しきれない可能性もあり、市のバックアップ体制と近隣自治体との広域連携も重要です。平時の対応も重要ですが、緊急時の対応対策は数多くの事例を研究していく必要があることを再確認できました。伊奈町の連携体制の確認及び見直しを図りたいと思います。

10. ストックマネジメント計画(最重要論点)

計画内容

  • 対象: 老朽化対策と耐震化

  • 期間: 今後15年間

  • 総事業費: 約90億円

  • 財源: 国費、起債、使用料改定(3年に1回目安)

課題

  • 90億円は非常に大きな金額であり、実現には事業期間の延長や平準化の検討が必要

  • 老朽化や地震対策の大規模更新は包括契約外で市が直接発注を実施

  • 今後も人件費、物価、修繕費の上昇が見込まれる

私の視点(最重要論点)

15年間で90億円という更新費用は、飯能市にとっても極めて重い財政負担です。包括委託により維持管理費は効率化できても、施設の大規模更新費用は別途必要となります。この点を伊奈町でも十分に認識する必要があります。下水道事業の真の課題は、日常的な維持管理コストよりも、莫大な施設更新費用をどう賄うかという点にあると考えます。使用料の値上げは住民負担に直結するため、議会としても慎重な議論が求められます。飯能市では3年に1回の料金改定を想定していますが、伊奈町でも将来的に同様の負担増が避けられない可能性が高いと言えます。できるだけ町民負担増を抑えられる手段・手法を他自治体から学ぶ必要性も感じた部分でもあります。

11. 広域連携の可能性

飯能市の現状

広域化の考え

  • 現時点で広域化の計画はない

  • 過去に埼玉県へ打診しましたが難色を示された

  • 莫大な初期投資が必要

今後の方針

  • 現有施設を改築・更新するストックマネジメント計画を推進

  • 近隣自治体との協議会は存在しますが、具体的な広域化は進んでいない

私の視点

広域化は理論的には効率化の有力な手段ですが、実現のハードルは極めて高いと言えます。飯能市の経験から、現実的には各自治体が個別に効率化を図りつつ、災害時の相互支援体制を整備する方が現実的と考えられます。伊奈町においても、近隣自治体(上尾市、桶川市、北本市等)との災害時連携協定の検討は有益です。ただし、日常的な広域運営については、初期投資と運営コストを慎重に検証する必要があります。(視察時の質疑で、災害時に近隣自治体と一時的に下水を融通し合える連携体制の構築について検討の必要性が提起されました。)

●飯能市の視察から

施設老朽化への備え

飯能市の状況は多くの自治体が直面する「近未来の姿」です。設備の老朽化は単なる故障リスクだけでなく、気候変動による豪雨増加への対応力低下という新たなリスクも生んでいます。部品の製造中止問題は予算確保だけでは解決できず、計画的な設備更新が不可欠です。伊奈町の施設がどの程度老朽化しているかを正確に把握し、飯能市のような状況に陥る前に計画的な対応を始める必要があることを痛感しました。

住民理解の醸成

下水道は「見えないインフラ」であり、住民の関心も低くなりがちですが、莫大な投資が必要な事業です。使用料改定の際には、施設の現状や必要性を丁寧に説明する責任があります。委託等を実施した際は、飯能市のように委託業者と協力した施設見学は、住民理解を深める有効な手段であると考えます。

包括委託の位置づけ

包括委託は、伊奈町の下水道事業を持続可能にするための有力な選択肢です。しかし、飯能市の事例から学ぶべきは、単なるコスト削減策としてではなく、人口減少時代における事業運営の抜本的な見直しの一環として位置づけることの重要性です。特に、令和6年度の契約金額大幅増額の事例は、「安ければ良い」という考え方が長期的には通用しないことを示しています。適正な対価を支払い、質の高いサービスを確保することが、結果的に住民の利益につながります。

総括

飯能市の下水道事業包括的民間委託は、15年以上の実績を持ち、確実に効果を上げている先進事例です。特に、発注事務の削減、予防保全型管理への転換、緊急時対応の迅速化といった点で顕著な成果が認められます。伊奈町においても、人口減少と施設老朽化は避けられない課題です。飯能市の経験を活かし、早期に現状分析と将来計画の策定に着手することを提言します。包括的民間委託は有力な選択肢の一つですが、伊奈町の実情に合わせた慎重な検討と段階的な導入が望ましいと考えます。

議会としては、執行部に対し具体的な検討を促すとともに、住民に対しても下水道事業の現状と課題を丁寧に説明していく責任があります。将来世代に持続可能な下水道サービスを引き継ぐため、今こそ行動を起こすべき時期にきていると考えます。生活に密接している下水道事業を学ぶ機会を得たことは大変有意義な視察となりました。町民の皆さまは、下水道事業に対してどの様にお考えでしょうか。今後のまちづくりに向けたご意見をお聞かせいただければ幸いです。





仲島ゆうた 日本維新の会・伊奈町議会議員

©2023 仲島ゆうた 日本維新の会・伊奈町議会議員

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